着替えも、ごはんも、お風呂も、寝かしつけも。「ママがいい」と泣かれ、パパが手を伸ばすと嫌がってしまう。
そんな日が続くと、ママは休むタイミングを失い、パパも「自分は嫌われているのかな」と寂しくなります。子どもの気持ちを大切にしたいと思う一方で、毎回ママだけが対応するのはしんどいものです。
「パパにも慣れてもらわなければ」と焦るほど、家族みんなの気持ちが張りつめてしまうこともあります。
けれど、「ママがいい」は、必ずしも「パパが嫌い」という意味ではありません。今回は、子どもの安心を守りながら、パパとの関係を少しずつ育てるために意識したいことを考えます。
「パパが嫌い」と決めつけなくていい
乳幼児期の子どもは、身近な大人との日々の関わりを通して信頼関係を育てます。厚生労働省の保育所保育指針でも、愛情豊かに世話をしてくれる大人との関係の中で、人への信頼感や主体性が育まれるとされています。
眠い、疲れた、おなかがすいた、慣れない場所にいる。そんなときほど、子どもは「いつもの人」「いちばん安心できる方法」を強く求めます。普段ママと過ごす時間が長ければ、不安な場面でママを選ぶのは不自然なことではありません。
昨日はパパと楽しく遊べたのに、今日は抱っこも嫌がることもあります。子どもの反応は、その日の体調や気分、時間帯にも左右されます。
一度拒否されたからといって、親子の関係ができていないわけではありません。「今はママで安心したいんだね」と、そのときの状態として受け取れると、少し気持ちが楽になります。
無理に引き離して慣らそうとしない
「泣いてもパパに任せたほうが、そのうち慣れる」と考えることもあります。ただ、子どもの不安が大きいときに、いきなりママが姿を消してしまうと、パパと過ごす時間そのものがつらい経験になることがあります。
最初からお風呂や寝かしつけをすべて任せるのではなく、まずはママも同じ空間にいるところから始めても十分です。
例えば、パパが絵本を読み、ママは隣で聞く。パパがパジャマを用意し、最後のボタンだけ一緒に留める。子どもが安心できる状態の中に、パパとの小さなやり取りを足していきます。
嫌がったときは「パパは嫌なの?」と何度も確認するより、「今日はママにしてほしかったんだね」と短く受け止めます。パパを選ばせようと説得するより、安心が戻ってからまた試すほうが、親子ともに続けやすくなります。
機嫌のよい時間に「パパとの楽しい」をつくる
眠る直前や急いでいる朝は、子どもにとって切り替えが難しい時間です。パパとの関わりを増やすなら、まずは機嫌がよく、時間に余裕のある場面が向いています。
特別なおでかけを用意する必要はありません。

- 朝、カーテンを開ける
- 好きな絵本を一冊読む
- おやつの飲み物を一緒に用意する
- お風呂でおもちゃを並べる
- 玄関までごみ出しに行く
短くても、繰り返せる関わりのほうが日常になじみます。「パパと過ごす時間は、ママがいない時間」ではなく、「パパと一緒に楽しめる時間」と感じられる経験を積み重ねることが大切です。
パパだけの小さな習慣をつくる
ママとまったく同じやり方を目指さなくても大丈夫です。
絵本の読み方や抱っこの仕方、遊び方が違うからこそ、子どもはそれぞれの人との関係をつくっていきます。パパがママの代わりになるのではなく、パパと子どもの間に独自の習慣が生まれることを目指します。
「朝の着替えはパパ」「帰宅後の手洗いは一緒」「寝る前の一冊はパパ」のように、無理なく続けられる役割をひとつ決めます。
うまくいった日だけでなく、途中でママに交代した日も失敗ではありません。パパが関わった数分間も、子どもとの関係をつくる時間になっています。
「全部ママ」をそのままにしない
子どもの「ママがいい」を尊重することと、ママがすべてを引き受けることは同じではありません。
「ママがいいなら仕方ない」と、食事から寝かしつけまでママに集中すると、休めない状態が続きます。疲れ切ったママに余裕を求めるだけでは、家族の負担は変わりません。
子どもへの直接対応が難しい日は、パパがそのほかの仕事を引き受ける方法もあります。ママが寝かしつけをしている間に、食器を片づける。翌日の準備をする。洗濯物をたたむ。
また、役割を小さく分けるのもひとつです。
「着替えはパパ、最後の抱っこはママ」「お風呂に入れるのはママ、髪を乾かすのはパパ」のように、子どもが受け入れやすい範囲から分担します。
ママの負担を減らす方法は、パパが子どもの対応を最後まで完了することだけではありません。今できることを家族全体で組み替える視点が必要です。
パパが傷ついたときに避けたいこと
何度も拒否されれば、パパが落ち込むのも自然なことです。それでも、子どもに「パパのこと嫌いなんだね」「もうパパは何もしないよ」と言うと、子どもは自分の気持ちに責任を感じてしまうかもしれません。
ママも「ほら、やっぱりママじゃないと無理」と決めつけず、パパが関われた小さな場面を一緒に見つけます。
「今日は絵本を最後まで聞けたね」「パパからお茶を受け取れたね」。大きな変化を求めず、できたことを家族の中で静かに共有します。
子どもの前では競い合わず、大人同士の寂しさや疲れは、子どもがいないところで話せると安心です。
「パパがいい」と言える日を急がない
子どもが安心できる相手を求めることは、わがままでも、誰かを困らせるための行動でもありません。
「ママがいい」という気持ちは受け止めながら、パパとの関わりは小さく、機嫌のよい時間から。ママに負担が偏るときは、子どもの対応以外も含めて家族の役割を見直します。
今日は抱っこを嫌がっても、明日は一緒に笑えるかもしれません。関係を急いで完成させようとせず、短い「楽しかった」を重ねていく。それが、子どもにとっても大人にとっても無理のない距離の縮め方なのだと思います。
もし、特定の人を極端に怖がる状態が長く続く、生活に大きな支障がある、親だけでは抱えきれないと感じる場合は、かかりつけの小児科や自治体の子育て相談窓口などに相談してください。
参考情報
※子どもの発達や反応には個人差があります。本記事は一般的な情報をもとにしたもので、個別の診断や医療上の助言を行うものではありません。