夕食が終わり、片づけも途中。時計を見ると、そろそろお風呂に入ってほしい時間です。けれど子どもは遊びに夢中で、「お風呂だよ」と言った瞬間に「いや!」。もう一度伝えても動かず、こちらの声だけが少しずつ強くなる。
一日の終わりに起きるお風呂のイヤイヤは、親の体力が残り少ない時間と重なります。「入ってしまえば楽しそうなのに」と思うほど、どうして今だけこんなに嫌がるのだろうと疲れてしまいます。
でも子どもが拒んでいるのは、お風呂そのものとは限りません。今している遊びをやめること、服を脱ぐこと、顔に水がかかること、眠さや疲れ。いくつもの切り替えが「お風呂に入る」の一言に含まれています。
そこで、無理に機嫌を直そうとするより、次の行動までの段差を少し低くする方法を試します。
「今すぐ」ではなく、終わりの目印をつくる
遊びの途中で突然「おしまい」と言われると、大人でも気持ちを切り替えにくいものです。「この絵本が終わったら」「積み木をあと一つ積んだら」「タイマーが鳴ったら」と、終わりが見える予告をします。
予告をしたからといって、毎回すんなり動けるわけではありません。それでも、次に起きることを先に伝えておくと、突然連れていかれる感覚を減らせます。

CDCは、一貫性・予測可能性・実行を日課づくりの要素として挙げています。毎日まったく同じ時刻でなくても、「夕食の次はお風呂」「タイマーが鳴ったらおもちゃを置く」など、流れを大きく変えないことが見通しにつながります。
お風呂までを、一つずつ伝える
「おもちゃを片づけて、服を脱いで、お風呂に入って」は、幼児には複数の指示です。最初は「車を箱に入れよう」。できたら「脱衣所まで行こう」。次に「ズボンを脱ごう」と、一つずつ伝えます。
CDCの幼児向け子育て情報でも、指示は具体的にし、一度に一つ伝える方法が紹介されています。「早くして」ではなく、「タオルを持ってきて」と、今する行動が見える言葉にします。
子どもが動かないと、同じ言葉を立て続けに言いたくなります。伝えたあとは少し待ち、できたところで次へ進みます。
二つだけ、選べる場所をつくる
お風呂に入ること自体は決まっていても、その中に小さな選択肢はつくれます。
「青いタオルと白いタオル、どちらにする?」
「歩いて行く? 抱っこで行く?」
「先に頭を洗う? 体から洗う?」
どちらを選んでも大人が受け入れられる二択にします。「お風呂に入る?」と聞いて、子どもが「入らない」と答えたあとに否定すると、選んだ感覚を奪ってしまいます。決まっていることは短く伝え、選べる部分だけを尋ねます。
選ばない日は「今日は白いタオルにするね」と大人が決めて構いません。選択肢を次々と追加して説得を続けないことも、親の消耗を減らします。
嫌な理由を、決めつけずに探す
いつもは平気なのに、急にお風呂を嫌がるようになったときは、何が負担なのかを見直します。お湯が熱い、シャワーの音が怖い、顔に水がかかる、湿った床が嫌、傷にお湯がしみる。子どもがうまく説明できない不快感があるかもしれません。
「お風呂が嫌なんだね」と受け止めたあと、「お湯が熱い?」「顔にかかるのが嫌?」と、一つずつ確かめます。原因が分からないままでも、シャワーを弱くする、湯温を確認する、顔を洗う日は小さなタオルを用意するなど、試せることはあります。
泣き方がいつもと違う、皮膚の痛みや発熱など体調の変化がある場合は、入浴を無理に続けず、必要に応じて医療機関へ相談します。
入れない日を、失敗にしない
どうしても激しく嫌がる日、親にももう余力がない日があります。そんな日は、お湯でぬらしたタオルで気になる部分を拭く、着替えだけするなど、その日の最低限に変えてもよいと考えます。
毎日予定どおりに入れることを目標にすると、一度できなかっただけで親も追い詰められます。清潔を保つことは大切ですが、親子の安全や体調を越えてまで、その日の一回にこだわる必要はありません。
「今日は短いお風呂にしよう」「今日は体を拭いて終わり」と大人が決めることは、子どもの要求に負けることではなく、その日の状態に合わせる判断です。
入れたあとの楽しさを、交換条件にしすぎない
おもちゃや入浴剤が切り替えの助けになることもあります。けれど毎回「入ったらお菓子」「泣かなければ動画」と条件を増やすと、親も準備を続けるのが大変です。
特別なご褒美より、「タオルを選ぶ」「今日のおもちゃを一つ持つ」「上がったら同じ絵本を読む」など、続けやすい小さな楽しみにします。できたときは「泣かなかったから偉い」ではなく、「自分で脱衣所まで来られたね」と、できた行動を具体的に伝えます。
お風呂に入りたくない日は、子どもだけでなく親も切り替えが難しい日です。予告する。一つずつ伝える。二つから選ぶ。嫌な理由を探す。無理な日は小さく終える。全部を試さなくても、今夜できそうなものを一つ選べば十分です。
参考情報
CDC「Tips for Building Structure」