椅子に座ったと思ったら、すぐに立ち上がる。おもちゃを取りに行き、戻ってきてひと口食べ、また歩き出す。食事のたびに「座って」と言い続けるのは、親にとっても疲れることです。
食事中に座っていてほしいのは、行儀のためだけではありません。食べ物を口に入れたまま歩いたり、笑ったり、話したりすると、窒息や誤嚥につながるおそれがあります。
一方で、幼い子が長い時間じっと座り続けるのは簡単ではありません。叱る回数を増やすより、守りたいことを少なく、分かりやすくしてみます。
まず守りたいのは「口に入っているときは歩かない」
消費者庁は、物を口に入れたまま走る、笑う、泣く、声を出すと、誤って食べ物を吸い込み、窒息や誤嚥につながるリスクがあると注意を促しています。
最初から「食事が終わるまで一度も立たない」を目指すと、親子とも苦しくなることがあります。まずは「お口に入っているときは座ろう」「歩く前に、ごっくんしよう」と、安全に直接つながるルールを一つ伝えます。
「行儀が悪い」「ちゃんとしなさい」のような抽象的な言葉より、今してほしい行動を短く伝えるほうが、幼い子には理解しやすくなります。
足がぶらぶらしない座り方をつくる
大人用の椅子や、体の大きさに合わない子ども椅子では、足が床に届かず、姿勢を保ちにくいことがあります。足裏を足置きにつけ、上体を起こして食べられるかを確認します。
テーブルが高すぎる、座面が滑る、食器へ手が届きにくいといった小さな使いにくさが、立ち上がるきっかけになることもあります。
椅子を買い替えなくても、メーカーの使用方法と安全性を確認したうえで足置きの位置を調整する、食器を手前に置くなど、今の環境で変えられるところから始めます。転落防止のベルトが付いた椅子は、取扱説明書に従って正しく使います。
食卓から気になるものを少し遠ざける
目の前でテレビが流れている、おもちゃが見える、家族が何度も席を立つ。子どもにとっては、食事以外に気になることがたくさんあります。
食事中だけテレビを消す、おもちゃを箱へ戻す、水やおかわりを先に用意する。すべてを静かにする必要はありませんが、立ち上がりたくなるきっかけを一つ減らすだけでも違います。
大人もできる範囲で一緒に座り、「今は食べる時間」という空気をつくります。親が家事で席を立たなければならない日まで、同じようにできなくても大丈夫です。
食事の終わりを分かりやすくする
立ち歩くたびに追いかけて食べさせると、子どもにとって「歩きながらでも食事は続く」という流れになることがあります。
立ったらすぐに食事を下げる、と厳しくする前に、「まだ食べるなら椅子に戻ろう」「ごちそうさまなら、お皿を下げるね」と二つの選択を落ち着いて伝えます。
戻ってきたらまた食べるのか、一定時間で食事を終えるのかは、年齢や家庭の生活リズムに合わせて決めます。家族の中で対応が毎回大きく変わらないようにしておくと、子どもも見通しを持ちやすくなります。
食べる量が少ないことが心配な場合は、追いかけて一口でも多く食べさせることより、間食の時間や量、食事前の空腹具合も含めて考えます。
できた瞬間を、短い言葉で伝える
立ったことを注意される時間が長くなると、食卓そのものが親子にとってつらい場所になることがあります。
座ってひと口食べられたら、「座って食べられたね」。口の中が空になってから立てたら、「ごっくんしてから動けたね」。できた行動をそのまま短く言葉にします。
ごほうびを毎回用意しなくても、自分が何をできたのか分かることが、次の行動につながります。
食べる力と落ち着きには個人差がある
疲れている日、眠い日、気になることがある日は、いつもより座っていられないこともあります。毎食同じようにできることを求めず、安全に関わる線だけは守り、そのほかは少しゆるめる日があってもいいのだと思います。
むせることが多い、かむことや飲み込むことが難しそう、食事量や成長が心配といった様子がある場合は、かかりつけの小児科、歯科、自治体の栄養相談などへ相談してください。
食卓のルールは、家族を縛るためではなく、安全に食べるための目印です。「口に入っているときは座る」から始めて、今の子どもと家族に合う形を探していきたいですね。
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